誹謗中傷バスターズ

X(旧Twitter)での誹謗中傷にどう対応するか──弁護士が解説する削除・発信者特定の実務

X(旧Twitter)は、日本国内で最も誹謗中傷が特に発生しやすいSNSの一つです。匿名アカウントによる投稿が拡散しやすく、リポスト機能によって被害が一気に広がるという特性を持っています。本コラムでは、X上で誹謗中傷を受けた際の削除申請・発信者特定の実務について、弁護士の視点から解説します。


1 X(旧Twitter)の誹謗中傷被害の特徴

Xでの誹謗中傷被害には、他のプラットフォームにはない特有の難しさがあります。

第一に、匿名アカウントの作成が容易であることです。メールアドレスと電話番号さえあれば誰でも複数アカウントを作れるため、特定のターゲットを攻撃する目的で「サブ垢」「捨て垢」が量産されることが珍しくありません。

第二に、リポスト・引用ポストによる拡散スピードです。問題の投稿が数時間で数万回拡散することもあり、削除が間に合わずに被害が固定化するケースが多発します。

第三に、運営会社が米国法人であることです。Xを運営するX Corp.は米国デラウェア州法人であり、日本の裁判所からの開示命令への対応は非常に遅いです。


2 削除申請の実務

Xに対する削除申請は、主に以下のルートで行います。

① プラットフォーム内の通報機能

投稿の「…」メニューから「ポストを報告」を選択し、ヘイト・嫌がらせ・プライバシー侵害等の該当カテゴリを選んで申請する方法です。ただし、AIによる自動審査が中心で、明らかな違反でない限り削除されないことが多いのが実情です。

② プライバシー侵害・名誉毀損の専用フォーム

Xヘルプセンターから「プライバシー侵害の申し立て」や「名誉毀損の申し立て」を選び、被害内容と該当URLを記載して送信します。

③ 仮処分申立てによる削除命令

任意の削除申請に応じない場合、東京地裁等に対して投稿削除の仮処分を申し立てます。認容されれば、X Corp.に対して削除を命じる裁判所の決定が出され、これに基づき削除がなされます。

①②で対応されない場合でも、③のルートで削除を実現できるケースは多くあります。重要なのは、最初から法的手段を視野に入れて証拠保全を行うことです。


3 発信者を特定するための手続き

X上の匿名投稿者を特定するには、発信者情報開示請求の手続きを踏む必要があります。Xの場合、特定までの流れは概ね次のとおりです。

第1段階

X Corp.に対する発信者情報開示命令(IPアドレス・タイムスタンプ・登録メールアドレス・電話番号の開示)を、東京地裁に申し立てます。

第2段階

開示されたIPアドレスから経由プロバイダ(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル等)を特定し、当該プロバイダに対して契約者情報の開示を求めます。


4 X特有の時間的制約に注意

X上の誹謗中傷対応で最も注意すべきは、ログの保存期間です。

経由プロバイダ各社は、契約者の通信ログを概ね3〜6ヶ月程度しか保存していません。投稿から半年を超えて開示請求を行うと、すでにログが消去されており、発信者の特定が不可能になっているケースが多いのです。

「しばらく様子を見てから対応しよう」という判断が、最終的に発信者特定の可能性を奪ってしまう──これがX案件で繰り返し起きています。

また、Xは日本の裁判所の命令に対する対応が非常に遅いです。開示命令の条件として、情報の保有がありますが、こちらの調査に数か月待たされることも珍しくありません。

さらに、開示命令の発令後、情報が開示されるまでに半年程度待たされることも珍しくありません。


5 被害を確認したら、まず何をすべきか

X上で自分や自社への誹謗中傷を発見したら、以下の対応を優先してください。

  1. 問題のポストのURL・スクリーンショット・投稿日時を必ず保存する
  2. アカウントのプロフィール・過去の投稿も併せて記録する
  3. 拡散状況(リポスト数・引用ポスト・関連ハッシュタグ)も保存する
  4. 感情的な反論ポストや引用は控える(二次炎上のリスク)
  5. 速やかに弁護士に相談する

特に④は重要です。被害者側がXで反応すると、それ自体が更なる拡散の燃料となり、当初の問題投稿よりも被害者側の反応の方が広く拡散してしまうケースも珍しくありません。


6 まとめ

Xでの誹謗中傷対応は、他のプラットフォーム以上に時間との戦いです。拡散速度が速く、ログ保存期間が短く、運営が海外法人であるという三重のハードルがあるため、初動の遅れがそのまま結果に直結します。

また、被害者側がXで反応することは、ほとんどの場合プラスに働きません。公の場での沈黙と、水面下での法的手続きの並行──これがX案件の鉄則です。

誹謗中傷バスターズでは、X上での誹謗中傷被害について、一貫してサポートしています。「これは法的に戦える案件か」の見極めから、お気軽にご相談ください。